「無声期の時代劇映画と和洋合奏――ヒラノ・コレクションの時代劇伴奏曲集 」 の開催
いよいよ今週末!(更新17/1/4)
早稲田大学演劇博物館所蔵の貴重な楽譜資料「ヒラノ・コレクション」関係の催しとしては3度目となる今回は、研究会のメンバーが伴奏譜ライブラリーからあらためて曲を選び、当時の編成で和洋合奏を試みます。
今回上映する映画は、昨年の『軍神橘中佐』や『実録忠臣蔵』とちがって、「ヒラノ・コレクション」の資料に作品名があるわけではないものですが、牧さんのご協力を得てきわめて貴重な2本の映画を上映できることになりみあした。一緒に演奏される「ヒラノ・コレクション」の楽譜がどんな可能性を開くのかとても楽しみです。
弁士は、先日の歌舞伎座公演も話題になった片岡一郎さん。演奏は、カラード・モノトーンの湯浅ジョウイチさんに指揮をお願いし、izumiさん、川上統さん、丹原要さん、古橋ゆきさん、そして宮澤やすみさんにお願いしました。楽しみというほかありません。しかも無料!
お時間ある方はぜひお越しください。
早稲田大学演劇映像学連携研究拠点 公募研究 成果報告会
無声期の時代劇映画と和洋合奏
ヒラノ・コレクションの時代劇伴奏曲集
プログラム
第1部 時代劇伴奏曲と作曲家:松平信博、佐々紅華(13:30-14:45)
第2部 「ヒラノ・コレクション」と現代の映画伴奏(15:05-17:00)
- ヒラノ・コレクションの伴奏譜から選曲した古い伴奏曲とカラード・モノトーンの演奏の聞き比べ!
- 参考上映 『一殺多生剣』 (伊藤大輔、右太プロ、1929年)
弁士 片岡一郎
演奏 izumi(flute)、川上統(cello)、丹原要(piano)、古橋ゆき(violin)、宮澤やすみ(shamisen)、湯浅ジョウイチ(guitar, conductor)
主催 早稲田大学演劇博物館演劇映像学連携研究拠点 公募研究「楽譜資料を中心とした無声期の映画館と音楽の研究」、協力・映像提供:牧由尚
過去のイベント
2015.02 研究報告会
2015.09 日本音楽学会支部横断企画公開研究会
2016.02 早稲田大学演劇博物館 演劇映像学連携研究拠点公募研究 成果報告会 「無声期の映画館と音楽 日活関連楽譜資料「ヒラノ・コレクション」から考える」
門司港にて
シンポジウムがひとまず無事に終わり、この週末は福岡県の門司港へ。
もともと近いうちに松永文庫に資料調査にいくつもりはあったのだけど、「地域文化としての映画」というとても気になるシンポジウムがあったのが、この週末にいった理由。
シンポジウムは 真鍋昌先生を司会として、パネリストに凪恵美さん、上田学さん、岡田秀則さん、倉本昭さんが登壇。2013年に松永文庫へくわわった中村上コレクションという、とんでもなく貴重な、研究者的にはテンション上がりまくる資料をめぐって、各パネリストが、的確にかつ多角的にこのコレクションの意義に光を当てていた。非常に勉強になった。
それにしても驚いたことが二つ。まず、シンポジウムに来ていた来場者の多さ。びっくりするほど多くの方が来場していた。こういった場を起点に各地域でいろいろな活動が広がっていくと素晴らしいなぁと勝手に期待する。しかしもう一つはこの松永文庫のスタッフの少なさ。この膨大な資料の整理と管理をなんとお2人でなされているとのこと。しかも「休館日:年4回」って!!でもそんななか、非常に丁寧にぼくのような研究者に丁寧に的確に資料を見せてくださり、たいへん有意義な時間を過ごさせていただきました。お世話になりました!!
日本音楽学会東日本支部でのシンポジウム開催【2016年10月8日(土)】
10月8日(土)に日本音楽学会の東日本支部例会でシンポジウムを開催します。いろいろと近い領域の催しが重なった日ですが、ぜひお越しください。入場無料、予約等不要です。
(2016/10/03更新)開始時間を5分早めました。
日時:2016年10月8日(土)
研究会開始:13:30(研究発表 13:35-13:15)
シンポジウム開始:14:25(~18:00)
シンポジウム
パネリスト:
柴田康太郎(兼コーディネーター、東京大学大学院)
「日本映画における選曲―サイレントからトーキーへ」
白井史人(早稲田大学演劇博物館)
「ドイツにおける無声映画の音楽―ハンドブック、選曲、作曲」
栗山和樹(国立音楽大学、ゲスト)
「映像音楽の現在―作曲家からの視点」
辻田昇司(ゲスト)
「映像音楽の現在―選曲家からの視点」
開催趣旨
開催趣旨
映像音楽の歴史、とくにその20世紀前半の歴史は、作品ごとの新作オリジナル曲が一般化する過程として、あるいは映像音楽の作曲家の仕事が次第に芸術表現として認められるようになる過程として語られることが多い。最も顕著なのはサイレントからトーキーへの移行期である。1920年代までのサイレント映画の音楽演出では既成曲からの、あるいは伴奏曲ライブラリーからの「選曲」が基本であったのに対し、1930年代になるとサウンド映画(トーキー映画)が広まってオリジナル曲の「作曲」が一般化し、多くの作曲家が作品に合わせて曲を書くようになったからである。それから現代までに至るまで、数々の作曲家が多様な音楽演出を試み、映画やテレビの仕事で名を馳せてきたことは周知のとおりである。
もっとも、既成曲を使った「選曲」による映像演出は、サウンド映画の一般化した後もさまざまに試みられ続けてきた。しかも選曲は、現在の映像をとりまく製作環境のなかできわめて重要な領域を占めるようになっている。作曲家が作品の演出プランを考えて作曲をすること以上に「選曲家」が重要な役割を担う局面が増えているという。選曲家が映像演出用のBGMライブラリーを使って選曲を行い、足りない部分だけを作曲家に任せることもあるようだ。もちろん、こうしたBGMライブラリーの使用と選曲の実践はテレビや記録映画などでは長いあいだ使われ続けてきたが、現代の映像音楽と選曲の関係は看過できないものとなっているのである。
他方「選曲」は現在、歴史研究においても興味ぶかい領域となっている。もちろん、現代のサイレント映画の伴奏音楽家たちのなかにも、過去の伴奏譜を使用したり、それを踏まえて演奏をおこなう者たちはいるが、日本の場合、かつての伴奏譜ライブラリーは現存がなく、歴史的な実態はそもそも分からない状況にあった。そんななか、2014年になって初めて早稲田大学演劇博物館へ昭和初期の日本の映画館で使用されていた楽譜(「ヒラノ・コレクション」)が収蔵され、その一端を窺い知ることができるようになり、日本でも過去の伴奏譜ライブラリーを使用し、改めて「選曲」を通して歴史的蘇演を試みる可能性が開かれつつある。
本シンポジウムでは、映像と音楽の関係、また選曲のあり方が多様なかたちで問題になる現代にあって、改めて研究者(柴田康太郎、白井史人)、作曲家(栗山和樹、ゲスト)、選曲家(辻田昇司、ゲスト)が集い、映像音楽と「選曲」の関係をめぐり多角的な議論を試みる。サイレント映画からテレビなど多様な映像にとって「選曲」がもつ可能性と限界を問い直す機会としたい。