SHIBATAROのブログ

映画史の入門書・入門(作成中)

非常勤先の学生から聞かれたので、入門者向け映画史の参考文献リスト(?)を作ってみました。通史として書かれつつコンパクトで1冊にまとまっているものをメインにしてます。もちろんコンパクトに書かれた歴史記述というのは(間違いだってあるし、主観的と思わずにいられない記述もあるし)1冊よんでお終いということにしないことが大事だよなぁとも思うんですが、でもまずは1冊読むべきですよね。

質問のなかには、1980年代以後についての記述がある書籍を教えてほしいというものもありましたが、あまりまとまった記述は思い当たらないので他にご存知の方ぜひお教えくださいませ。

映画史の新書

さて、まず新書。映画を扱う新書はたくさんあるけれども、映画史という体裁の本としては、ひとまず以下のものがある。『日本映画110年』や『フランス映画史の誘惑』は作品ベースの歴史。『ハリウッド100年史講義』や『映画館と観客の文化史』はもっと広く産業史・社会史・文化史といった観点からの記述。どれも定番です。

    

僕のやってる授業は「日本映画史」なので『日本映画110年』については補足を。日本映画史の詳しい本としては佐藤忠男『増補 日本映画史』(全4巻)が定番なのだけども、『日本映画110年』は佐藤の論述も下敷きにしつつ(章立て=節立てなど)、これを大胆に圧縮しているように見える。だから、読んでみて気になったところは『増補 日本映画史』を参照するのにも便利かもしれない。2冊を見比べて、筆致から垣間見える筆者の個性を読むのもおもしろいと思う。

   

ちなみに、新書がこういうふうに4冊も挙がる一方で、文庫となると浮かぶものがない。田中純一郎の『日本映画発達史』(全5巻)などは日本映画史の必須文献だけども、極めて詳細な5巻本だし入門書ではない。当たり前ながら、ゴダールの『ゴダール 映画史(全)』は1巻本で入門書みたいに見えるにせよ、いわゆる通史ではない。手に取ればすぐわかるけども。

その他の単行本

では、新書・文庫以外で一冊でまとまっているようなもの。結局すこししか浮かばなかった。まず日本映画史だと、北海道新聞の連載をもとにした『日本映画100年史』が読みやすい。新聞記者が書いていることもあって社会史的なところも強く書かれているので、社会背景などを踏まえて読むのに良い。と同時に、北海道での事例を織り交ぜて書かれているので、一般的な入門書とはいえないところもあるけども、そこに地方から見る日本映画史みたいな特徴がある。個人的にはそこがとくにおもしろい。

『世界の映画作家31 日本映画史』(キネマ旬報、1976年)も古い本だけど、1冊で詳細な記述が行われていてとても充実している。映画100年(1995年)の頃に作られた展覧会の図録やムック本にもコンパクトで読みやすい本がある。それから、村山匡一郎編『映画史を学ぶ クリティカル・ワーズ(新装増補版)』(2013)も参考書として有意義。これはその名の通り用語集なのだけれども、10年ごとにくぎって簡単に2~3頁ずつその時代をまとめた記述もあるので、ちょっと通史的なところがある。

    

ちなみに「国会図書館デジタルコレクション」にも映画本でもとんでもなく貴重な本がたくさんオンライン公開されている。歴史的文献だけども。日本映画史ということでいえば、筈見恒夫『映画五十年史』(鱒書房、1947年)がある。もっと遡れば、映画評論社編『定本世界映画芸術発達史』(映画評論社出版部, 1933)もある

1980年代以後の歴史を扱うもの

で、1980年代以後の歴史記述っていうことで質問があったので考えてみたのだけれどもあまり思い浮かぶものはないのだけど、Cine Lessonシリーズはコンパクトでとてもいい仕事。これまで計18冊出ていて、いろいろなトピックを扱った本が出ているのだけれども、日本映画史で下の2冊を、ついでに世界映画史の1冊(これは古い時代を扱うものだけど)を挙げてみた。それから『映画秘宝』系のものも。

  • 武藤起一、森直人編『〈日本製映画〉の読み方1980~1999 / シネレッスン(6) 』フィルムアート社、1999年。
  • 森直人編『日本発 映画ゼロ世代 新しいJム-ヴィ-の読み方/ シネレッスン別冊』フィルムアート社、2006年。
  • 浜口幸一編『「逆引き」世界映画史! / シネレッスン(7) フィルムアート社、1999年。 

       

映画学を扱う入門書

せっかくなので映画史だけでなく、映画学の入門書もちらっと挙げてみる。が、まぁこれはまた追々。